動的多細胞社会の理解と「細胞コミュニティ学」の創成
動的多細胞社会の理解と「細胞コミュニティ学」の創成

人は、出生の瞬間から社会との関わりを持ちます。家族、近隣住民、学校、会社、そして友人など、人は様々な「コミュニティ」に加わったり離れたりしながら、他者とつながりを持ちながら一生を過ごします。このコミュニティの中でのつながりは、人の社会行動や意思決定に大きな影響をおよぼします。

近年、生命科学の分野において、「細胞社会」というキーワードをもとに、生体組織内の細胞集団を人間社会に見立てた研究が行われてきました。しかしながら、近年の社会科学で重要視されている「コミュニティ」の視点が欠如していました。本研究代表者もこれまで、生体イメージング技術を駆使して、生体内の細胞動態ネットワークの解析を行ってきました。一方で、生体内での生きた細胞集団の挙動を詳らかに解析すればするほど、それらが一体どのような“論理”で統制されているのか疑問を持つようになりました。そこで本領域研究では、人文社会科学の理論を組み込むという新たな挑戦により、1細胞レベルでの細胞動態から細胞組織全体へと一気に分析的視野を拡大する生命科学の階層における従来の考え方に、「細胞コミュニティ」という中間層を新たな概念として導入することで、より構造的に細胞社会を捉え、最終的に動的多細胞コミュニティを支配する基本原理を解明します。

近年の社会科学では、個々のエージェントの動きにより強く影響するのは、社会全体のマクロ的状況よりも、むしろ局所的近隣の状況だということが広く認識されつつあります。多細胞コミュニティを重視することは、細胞同士の「つながり」に注目することを意味します。本領域研究は、近年の社会科学で注目されている数理解析手法を応用することで、細胞コミュニティの構造に対して個々の細胞がどのように反応するかを解析し、細胞間のつながりを軸に、動的多細胞社会を理解する新しい学理「細胞コミュニティ学」の創出を目指します。

計画研究班

A01:動的多細胞コミュニティの生体イメージング解析
菊田 順一(神戸大学大学院医学研究科 未来医学講座 免疫学分野 教授)
A02:細胞動画像とオミクスデータの統合による細胞コミュニティの解析手法の開発
研究代表者/瀬尾 茂人(大阪大学 大学院情報科学研究科 バイオ情報工学専攻 ゲノム情報工学講座 准教授)
研究分担者/梅谷 俊治(株式会社リクルート / 大阪大学大学院情報学研究科 招へい教授)
A03:動的多細胞コミュニティの数理社会解析
研究代表者/加藤 晋 (東京大学 社会科学研究所 准教授)
研究分担者/五十嵐 彰(大阪大学 人間科学部 講師)
      図斎 大(東北大学 経済学研究科 准教授)
      澤 亮治(筑波大学 システム情報系 教授)

領域アドバイザー

椛島 健治(京都大学大学院 医学研究科 教授)
山田 亮(京都大学大学院 医学研究科 名誉教授)

学術調査官

堀 里子(慶應義塾大学 薬学部 教授)
星野 歩子(東京工業大学 生命理工学院 准教授)

お問い合わせ

領域代表者:菊田 順一
神戸大学大学院医学研究科 未来医学講座 免疫学分野・教授
650-0017 神戸市中央区楠町7丁目5-1
078-382-2640 jkikuta☆med.kobe-u.ac.jp(☆を@に置き換えてください)